血圧の薬(降圧剤)は必要ないという暴論

日本では高血圧の治療に関して、余りにも暴論・極論が氾濫しているので、問題提起してみたいと思います。

日本高血圧学会が「高血圧治療ガイドライン」というのを出しており、「病院の検診で上1400mmHg未満、下90mmHg未満」というのが適正値だとされ、それ以上を「高血圧」として治療の対象だとされています。厚生労働省など公的な数値も、概ねこれをベースに作られていることが多いです。

しかし一部の医師や医療ジャーナリストは、この数値を疑問視する発言をくり返しています。彼ら曰く、140/90mmHgなど高血圧ではないので、降圧剤治療など必要ないというのです。その理由として、高血圧の基準値は何度も変更されており、元々130/85mmHgだったのが2014年から140/90mmHgに緩和されており、数値の根拠が不明瞭だという主張です。

元々、日本では製薬会社の利権の為に、厳しめの数値を基準にして降圧剤の患者数を増やそうという目論見が、医療界でまかり通っていた。それが高齢化により医療費削減が不可欠となり、目標値が緩和された・・・などというのです。数々の医療界のタブーを破壊してきた近藤誠先生も、高血圧の薬物治療に疑問を投げかけている一人です。

確かに日本では、為政者側の利権拡大の為に、基準値がねじ曲げられる分野は多いです。食糧自給率(「カロリーベース」というインチキ指数)しかり、100年安心年金(実現するための利回り資産が甘すぎる)とか、原発の安全基準(語るのも馬鹿らしい詐欺)なども該当します。専門家からすれば明らかにおかしな理論で基準が構築されるケースは、日本ではよくあります。

しかし、こと血圧に関しては、私は「降圧剤・降圧治療などいらない」という主張は、暴論が過ぎると感じますね。健常者と私のように脳出血の経験者とでは、高血圧の恐ろしさは全く別次元の話になります。私は退院後も薬を飲んでおり、血圧は上が120台から130台、下も80台~90台で落ち着いていますが、これは明らかに降圧剤の効果でしょう。

脳出血を一度経験した私は、たとえ「140/90mmHgまでOKだから、もう薬を飲むのを止めるか?」と問われても、絶対に降圧剤を飲み続けますね。実際に脳卒中や動脈硬化などを経験した人間は、血圧に関して神経質にならざるを得ないので、健常者で他人事のように論文を書くだけの医者の意見など、全く信用できないですね。ですから少なくとも、脳出血・脳卒中の経験者と、一般の健常者とでは、降圧治療の基準値は分けて議論すべきですが、それすら混同して必要か否かを語られる事が多い・・・。

ある日突然手が動かなくなるという恐怖を経験した私は、明らかに低血圧という水準までなったりでもしない限り、血圧を下げる薬を飲み続けるでしょう。ガイドラインの数値がどうなろうと、有名な医師が「高血圧など病気じゃない」なんてほざこうとも、脳出血の経験者にはまったく響かない言葉ですね。薬を飲み続けるコストや手間など、命の危険を体験した者にとってはどうでもいい事です。私たちにとっては、高血圧はやばい病気なんですよ!