差額ベッド代を医療保険で賄うのは損

私が脳出血で入院した際、迷わず差額ベッド代が必要な個室を選びました⇒脳の病気の入院で絶対に個室を選ぶべき理由。しかし、差額ベッド代は(病院により異なりますが)平均で1日1万円程度が必要で、これは大部屋だと掛からない料金です。私の病院では1万5千円ほど掛かりました。しかも差額ベッド代は公的な健康保険の対象外なので、全額自己負担です(但し医療費との混合診療にはならないので、脳出血の治療には健康保険が利きます)。

決して安くない金額ですよね。そのため、民間の医療保険には、差額ベッド代を保証する特約というのも存在しています。これに入っていれば、病院で個室に入院して差額ベッド代が必要になっても、保険で賄われることになります。

しかし私は、差額ベッド代を保証する特約など、入るべきではないと思います。私は職業柄、金融の事については詳しいのですが、保険会社というのは様々な特約を付けることで利益を上げており、保険の本体部分ではさほど利益はあがらない仕組みなのです。保険会社がテレビCMなどで、しきりに「安心ですよ」と様々な特約をPRするのは、利益率の良いおいしい商品だからです。

逆に言うと、我々保険ユーザーの側からは、割の悪い、損な商品と言うことになります。



病院側の都合で個室に入るなら、差額ベッド代は不要


もう一つ注意点として、差額ベッド代が払える状況であっても、病室の空き状況によっては、個室に入れない可能性もあります。つまり、仮に医療保険の差額ベッド代特約を付けていても、実際には個室が満室で大部屋にしか入れず、保険料が丸々損する可能性もあるのです。

逆に大部屋が満室で空いていないという、病院の都合で個室に入院させられた場合には、差額ベッド代は払わなくて良いことになっています。悪質な病院だと、そのことを伏せて差額ベッド代を請求してくるケースもあるようですが、厚生労働省の取り決めで決まっている事なので、断固拒否してかまわないのです。

いずれにせよ、差額ベッド代には不確定要素が多く、保険で備えるのは合理的な判断とは言えません。

もっと言うと、医療保険というのは本人に限定された保証です。夫に掛けた医療保険は、妻が病気になっても一円ももらえません。一方、家庭で貯金していたお金なら、妻だろうと子供だろうと、誰の医療費だろうが問題なく使えます。

確率的に言えば、保険というのは大多数の人が「掛け損」で終わるものなのです(でなければ保険会社が潰れています)。ですから、多くの家庭では、保険に入るよりも毎月しっかり貯金しておく方が、経済的なのです。とはいえ、小さな子供が要る家庭で、収入の大黒柱である夫が入院する事になれば、家計は火の車になりかねません。

ですから、医療保険自体を全否定はしませんが、極力無駄な特約は付けず、基本的な医療保証だけに留めておくことが、多くの家庭にとって合理的な選択となるでしょう。