高血圧と塩分の関係

そんな訳で、私の脳出血は手術無しで回復できましたが、血圧のコントロールを行う必要がありました。退院後も高血圧にならぬよう、食事に注意する事を指導されました。特に重要な事が、食事の塩分量です。

高血圧の予防として、一般的に提唱されている方法が、塩分摂取を控えることです。人間には、体内の塩分の割合を一定に保とうとする性質があり、塩分濃度が高くなると、体は自動的に血液内の水分を増やして、濃度を薄めようと働くのです。塩辛いものを食べると喉が渇くというのも、こうした体の働きによるものです。血液内の水分が増えると、それだけ血管を押し広げることになりますから、血圧も上昇してしまうのです。また、塩に含まれるナトリウム成分は、血管を収縮する働きがあり、これも高血圧の原因になると考えられています。


ですから、普段から塩分を控えた食生活を心がけておく必要があります。例えば、味噌汁を作る場合も、鰹や昆布、椎茸などから十分ダシを取ることで、(塩分の多い)味噌の量を抑えても薄味で物足りない感覚を緩和できます。また、肉や魚を焼く場合も、香辛料やハーブなどを用いることで、塩の量を最低限にしても、充分に旨みが引き出せるのです。

逆に、カップラーメンなどのインスタント食品は、非常に塩分が多いです。厚生労働省では、塩分摂取量の一日の目標値は男性で10g未満女性は8g未満とされていますが、日本高血圧学会によると、脳卒中など血圧コントロールが必要な患者の塩分摂取量の目標値は1日6g未満とされています。カップラーメンの代表的な存在である日清のカップヌードルの塩分は、約5.1gです。つまり、カップヌードルを1杯食べただけで、ほぼ一日分の塩分を摂取してしまったことになります。小腹が空いた時には、ついついインスタント食品に手を伸ばしたくなりますが、血圧コントロールを行う脳卒中の患者にとっては、非常に危険な食品であることを認識しておかなければなりません。

ただ、高血圧の症状を持つ人には、塩分摂取によって血圧が大きく変動する人(食塩感受性)と、ほとんど変化の無い人(食塩非感受性)の二つのタイプが存在します。そして、高血圧患者のおよそ8割は、食塩非感受性だと言われています。つまり、大多数の高血圧患者は、塩分摂取を控えても、血圧は下がらないということになります。では、食塩非感受性の人は減塩しなくても良いのかと言うと、決してそんなことはありません。塩分を摂取しすぎると、体内からナトリウムを排出する機能が弱まったり、コレステロール値が上昇して、血栓が出来やすくなるという問題もあるからです。ですから、どんな人であっても、塩分の取りすぎには気を付けなければなりません。

しかし残念ながら、高血圧の原因となるのは塩分だけではありません。他にも、肥満体質、アルコールの飲みすぎ、喫煙、ストレス、遺伝的なものなど、様々な要素が絡み合って引き起こると考えられています。実は、高血圧患者の9割以上が本態性高血圧(原因不明の高血圧)であり、高血圧になる理由は、未だに完全には解明されてはいないのが実情なのです。

高血圧は生活習慣病であり、長い時間をかけて体に変調をきたしてきたものです。それ故に、その症状は一朝一夕で改善されるものではありません。大きな病気を引き起こさないためにも、普段から健全な生活習慣を心がけておくことが大切です。